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「夏草の記憶」(トマス・H. クック) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

8月以降にベッドと車椅子に縛りつけられた生活に移行した結果、読書量は激減してしまった。ベッド(あるいは車椅子)上で起きている時間は全て読書に費やせて十分読書時間は取れるだろうに、と思われるだろうが、違う(ヘルパーの介護に必要な吸取り紙用新聞紙を順調に供するため、毎日の新聞を〈新聞〉のまま〈後で読む〉状態に置いておくことが許されなくなり、毎日その日の新聞はすみやかに《新聞紙》に変換しなければならず、一通り丹念に読む私のかなりの可処分時間を費消するに至ったのだ)。

それでもそれなりには本も読もうと思った(それでなければ闘病の意味がほぼ失われる)。
図書館から借り出すことが困難になったので、借りてあった本は全部返し、予約登録してあったのは全てキャンセルした。1年近く待ってやっと順番が回ってきそうになっていたものも幾冊かあって泣く泣く…である。そして、家の中にある膨大な量の積ん読本から読む本を選ぶ事にした。本来借りてまで読むのではなく、元々こちらの消化からやるべきだったのではあるし。

で、適当に漁ってこの文庫本を選び出した。他意はなく殆んど行きあたりばったりの選書である。車椅子に乗った体勢でも手の届くところにあったのが実は大きかったりする。

  クックについては、大昔「緋色の記憶」を読んだことがあり、内容こそきれいさっぱり忘れているが、重厚な読後感で感銘を受けた記憶はある。池上冬樹氏が「クックを読まずして現代小説を語ることはできない」「クックを知らぬ人は小説ファンではない」などと、これまた大袈裟に推しているのだが、その言葉も頭の片隅に残っていた。

夏草の記憶 (文春文庫)

夏草の記憶 (文春文庫)

  • 作者: トマス・H. クック
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1999/09
  • メディア: 文庫

 
それにしても、現在の境遇で読むには内容的に少々「重すぎる」作品だったかも知れない。さほどの厚さではないのだが、読み切るのにえらく時間がかかり、10日くらいかかってしまった。ベッド上の生活の不自由さの故ではある。「この人ホントにアメリカ人なの?」ってくらい、内省的で生真面目で、悪く言えば「陰気」な重苦しさを抱え込んでしまっている作家は珍しいのではないか?

主に30年前(1962〜63頃)のアメリカ南部の田舎町での高校生活が舞台で、当然青春恋愛小説ではあるのだが、凄惨なJK殺人事件、その真相究明がメインで、しかも主人公は被害者にとても近しい存在で片思いに胸焦がしていた非モテ男子高校生という設定で、この主人公が一人称で克明に回想し語るという、かなりとんでもなく陰気な重苦しい作品であった。読者を散々引きずり回した後の結末のどんでん返しはなかなかのものだ。
 そして〈時制〉がめまぐるしく過去から現在、さらにはその途中から分岐して別の中過去へ飛んだりして、いったいいつの話やらと戸惑うことも多く、リーダビリティはかなり悪いのだが、それでも一旦読み始めたら引き込まれて、展開がどうなるのか気にならしめ、読者を捉えて離さない迫力を持っていた。
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Nue

更新の間隔があいているので心配しております。少しでも良い方向に向かっておりますように。
by Nue (2016-10-18 17:59) 

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