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「その木戸を通って」(山本 周五郎) [小説]

 山本周五郎の作品は読んだことが無かった。映画化されたものは見たことは何本かあるのだけれど。
 だいぶ前からこの短編小説についての多くの高い評価(中には「山本周五郎の最高傑作」という声もあったように記憶している)を断片的に何度か目にしていて、ぜひ読んでみようと思っていたのだが、なかなか図書館で文庫(短編集)の中に見つけられずに月日が経ってしまっていたのだった。 
 しかし、真面目に検索すると、このアンソロジー(これはこれで掘り出し物だ)の中に収められているのを発見して、借り出して読んだ。


 もちろん真っ先にこの「その木戸を…」を読んだので、残りは全部読んでからまとめて書くことにして、これについては先に単独の記事として特別扱いで書こうという次第。

 時代小説に「記憶喪失」のテーマは珍しいのだろうか? ほとんど読まないのでどうなのか知らない。「神隠し」ものでもある。記憶を失って迷い込んできた若い娘を受け入れて保護し、その人柄に惚れ込み、やがて妻とし、周りのものからも好かれ、赤ん坊まで生まれて幸せな生活が訪れる。
 …という異色の作品。それが一転してのエンディングの切々たる哀愁が素晴らしく余韻を残す。

 と言っても生来の天邪鬼のせいか、アラ探しをついやってしまうのだが、やはりやや「ご都合」の気味はある。記憶喪失ということは自我の継続性や帰属意識を失い、結果アイデンティティーを失っている筈で、その人格を安定的に保持し得るのか? そんな者があれほどの魅力的な人間性を発揮するというのは少々不自然ではないのか?という心理学的な疑問がある。
 そもそもの設定成り行きからしても「親方、空から女の子が!」的な〈ご都合〉もある。

 しかし作品の持つ豊かな人間愛が、それらを些事として忘れさせてしまう効果があるのだろうとは思った。読後感はよかった。

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コメント 2

A氏

ここまで来たら、藤沢周平を読むしかない。
by A氏 (2015-12-06 20:21) 

ask

いやいや、時代小説にはハマらない、という確認をしたばかりですので。
今回の「その木戸…」は別格扱いです。そもそも、時代小説としては破格のものだし。
by ask (2015-12-07 22:38) 

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