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「掏摸」(中村 文則) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

随分前から目にはついていた作家だが、中村文則を読むのは初めて。この小説はウォールストリートジャーナルの2012年間ベスト10小説に選ばれたりと評判になったらしい。日本(大江健三郎賞受賞)よりもむしろ海外でウケているようだ。
 最近の「去年の冬、きみと別れ」という作品が図書館で凄い待ち行列で待たされるので、こちらをオーダーしたらすぐ借りられた。

掏摸(スリ)

掏摸(スリ)



 中篇の短い作品なので、すぐに読み終わった。リーダビリティは高く、面白い。掏摸という特殊な世界を描いており、そのテクニック描写も面白いが、ストーリーはとんでもなくぶっ飛んでいる。日本の政財界を裏から操る闇の組織に組み込まれ、極めて困難な掏摸の仕事をさせられるという展開。ここに出てくる悪魔的なボスキャラの造形がなかなか凄い。
 とは言え、この〈悪の組織〉の背景、構造、社会的意味などの面は全く触れられず、末端の事象面だけの描写(自体は素晴らしい)に終始してしまっているので、何だかおどろおどろしいというだけの道具立てに終わっているのが不満といえば不満だが、そこまで要求するのは無理筋なのかも知れない。

 この作家、単なるエンタメでも純文学でもなく、その双方の要素を兼ね備えた作品を志向しているようなのだが、なるほど、面白くかつ深みのある人間描写、心理描写がなされている。「ご都合主義」はあまり感じなかった。
 主人公の幻視する、遠くにあり近づけない高い塔のイメージ、おそらくこの世界の不条理さを超越する、一種の憧憬の象徴のように思える。

タグ:ミステリ
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